アキアカネに優しい農薬とは?
上述のように平成24年に田んぼで3匹羽化させて以来試行錯誤を繰り返し、徐々に羽化数を増やし、平成28年の田んぼでの羽化数は、17カゴで68匹のアキアカネを羽化させることに成功しました。
その際使用したのは、農薬Dで、デジタルコラトップアクタラという殺虫剤です。これまでの一連の羽化実験で、この農薬がアキアカネに優しいことが判明したと思います。
アキアカネを育む農法とは?
アキアカネを本当に増やすには、田んぼで羽化させるだけでは不十分です。田んぼで卵を産んでくれないと始まりません。その為には、産卵しやすい環境も作ってやらねばなりません。私たちは、一連の流れを意識して、彼らが増える為の方策を農法として組立てました。その概要は次の通りです。
a,まず、田植え前に施用する箱処理剤(殺虫剤)はアキアカネに優しいデジタルコラトップアクタラを使用します。
b,アキアカネは孵化後約2ヵ月で羽化しますので2ヵ月間水を切らさないようにします。その為、慣行農法で行なっていた”中干し”をやめて、”間断灌水(かんだんかんすい)”という方法をとります。
c,稲刈り後は、田んぼに浅い水たまりができるようにします。これによってアキアカネが産卵しやすい環境を作ります。
d,減農薬・減化学肥料に取組み、ひょうご推奨ブランドを取得しています。
直近(平成28年)の田んぼでの羽化について
〇すべて卵から飼育~より自然羽化に近くなった
この年の大きな特徴は、すべて卵から羽化したものです。以前は、田んぼの飼育カゴには生後3週間ぐらいのアキアカネのヤゴを放流し、トロ箱では卵を放流していました。ヤゴを放流していた理由は、分母となる初めの放流数が的確に把握出来るからです。しかし、この年は、小生が胃がんの手術で入院しなければならず、人工的に孵化させて飼育する時間が取れませんでした。
しかしながら、以前からトロ箱では卵からの飼育で羽化に成功していた為、次に述べる飼育容器の改善によって卵から羽化させることは不可能ではないと考え、卵からの飼育に踏み切ることとしました。
〇田んぼに設置する飼育容器の改善~田んぼでの羽化数増につながった
平成27年までは天敵に対する防御やエサの供給の問題から、飼育カゴ(写真左から1枚目)の中にペットボトル(写真2枚目)や木製の小さい容器(写真3枚目)にヤゴを入れて飼育していましたが、トロ箱(写真4枚目)で卵からの羽化が増加したので、トロ箱の機能を持った新しい飼育カゴ(写真5枚目)を開発しました。つまり、ある程度広い水空間になったのでエサとなるミジンコが自然増殖するように鶏糞を多めに入れることが出来ました。また容器が広くなったことで、中のミジンコがチェックしやすくなり、ミジンコの生存を確認しながら飼育することが出来、結果的に2週間に1回(前年は2日に1回)のミジンコ補充で済みました。その結果、羽化実績も前年の39匹から68匹に増加(74%増)し、羽化したカゴの数も10カゴから17カゴ(70%増)に増加したのです。