童謡「赤とんぼ」の情景を復活させよう!
 童謡「赤とんぼ」は、たつの市出身の詩人・三木露風が作詩した歌です。昔から子どもから大人まで多くの人々に親しまれてきた童謡ですが、平成23年にNHKの「名曲アルバム」が35周年を迎え、その記念として全国の視聴者から「あなたが選ぶ未来に残したい名曲(35曲)」を募った結果、クラシックやポップス等を含めた色んなジャンルの曲の中で、童謡「赤とんぼ」が12位(童謡の中では1位)となりました。このことによって、童謡「赤とんぼ」は本当に多くの方々に親しまれている童謡であることを改めて認識させられました。 
 その詩の内容は、露風が幼い頃の龍野(現たつの市)の情景を詠ったものだと言われています。詩によって表現された郷愁や情緒、そしてメロディ(作曲;山田耕筰)が日本人の心に強く印象付けられた結果と思われます。
 また詩の中に出てくる“赤トンボ”(昆虫)ですが、当時全国的にどこにでもいた”アキアカカネ”であると言われています。しかし、そのアキアカネが、近年、全国的に激減しているのです。平成27年10月の朝日新聞では、7府県でレッドリストに登録されていることが報じられました。このままだと三木露風が詠んだ童謡「赤とんぼ」の風景は見られなくなってしまうかもしれません。私たちは、このような失われつつある秋の風物詩、すなわち”童謡赤とんぼに詠われたアキアカネが群れ飛ぶ風景”を復活させるために頑張っています。
なぜ”アキアカネ”なのか?
 アキアカネは一説によると数億年(3億年ぐらい?)前に日本列島とシベリア大陸が分離した際に日本に取り残された日本の固有種であると言われています。そのアキアカネは日本人の祖先が稲作をする前から生息し、稲作が始まったころから増殖し、つい20年ほど前までは日本全国どこにでも見られました。しかし平成12年(2000年)頃から急激に減少し、前述のような状況になっています。私たちがアキアカネに着目したのは、何億年も前から毎年1回卵を産んで命をつないできた彼らを、私たちの時代で、ましてやこんな短期間で絶滅させてはならないと考えたからです。また、龍野(現たつの市)は、童謡「赤とんぼ」の作詩者三木露風の生誕地でもあり、詩の中に詠われた龍野の情景が見られなくなるのは忍びないと思い、”たつのがやらんでどうするの!”という気持ちで取り組み始めたのです。
アキアカネが激減した原因と対策
 アキアカネが減少した理由は諸説考えられていますが、未だ完全に特定されていません。しかし、実態として、アキアカネは10月下旬~11月に主に田んぼの水たまり等に産卵し、7月に羽化するまで約9カ月間田んぼで過ごします。石川県立大学の上田哲行名誉教授は、平成23年6月に、2000年(平成12年)頃から育苗箱施用剤としてある農薬の流通量が急速に増加したのと反比例してアキアカネが急激に減少したと「現代農業」という専門誌に論文を発表されました。育苗箱施用剤というのは“殺虫殺菌剤”で、通称”箱処理剤”と呼ばれ、田植え前に予防の為に苗に散布する農薬のことです。
 特にその農薬の中に配合されていたフィプロニルという成分がアキアカネに大きく影響しているということでした。
 私たちは、アキアカネが減少した主原因、つまり”犯人探し”をやるのはもはや時間的に余裕がないと考え、”対策”から入ることにしました。たとえ主原因と言えなくても少しでも増やせるのなら、その方が現実的であり、一歩でも半歩でも前へ進むべきではないかと判断したのです。そこで、農薬の選定に当たっては、上田名誉教授から助言を頂き、フィプロニルが入っていないデジタルコラトップアクタラを中心に試すことにしました。つまり以後の実験では、農薬の種類による違いを調べ、従来から広く使用されている農薬の代りになる農薬を見つけることに主眼を置くことにしました。